【入門編】台湾原住民族をさらっと解説

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日本から片道約3~4時間、今や観光地としても人気の台湾には「原住民」げんじゅうみんと呼ばれる人々が住んでいることをご存知だったでしょうか。歴史の授業ではほとんど取り扱われないため、その存在を知らない人が多いのもそのはず。この記事を読んでいただければ、台湾原住民族の概要がわかります。ぜひ、一緒に学んでいきましょう。本編スタート!

概要をわかりやすくまとめた図

原住民と呼ばれている理由

日本にもアイヌと呼ばれる先住民がいるように、台湾にも先住民がいます。「原住民族」と呼ばれており、日本ではあまりなじみがない呼称かもしれませんが、ちゃんとした理由と歴史があるのです。

台湾では先住民というと、すでに滅んでしまった民族という意味になります。原住民の「原」は、「もと」や「みなもと」といった意味合いがあります。原点、原因、原本など日々使っている単語を思い浮かべてみるとわかりやすいかもしれません。
太古から台湾に住んでいる人々を「原住民」と呼ぶ理由はここから来ています。

彼らが勝ち取った呼称

そんな彼らですが、原住民という呼称を獲得できたのは比較的最近です。それまでは野蛮を意味する「蕃人」と呼ばれたり、山に住んでいる民族「高山族」などと呼ばれていました。

歴史的にみて台湾という土地は外国が統治や支配した時代が長く続き、その中で彼らの立場は弱かったのです。20世紀が終わる頃、台湾社会全体で民主化運動が活発になりその一環で原住民族の権利獲得を求める運動が起こり始めました。

そして1994年8月1日、憲法改正で彼らの呼称を「原住民族」とすることを公式に定めたのです(正名運動と呼ばれています)
台湾では8月1日を「原住民族の日」として記念日に定めています。
台湾の原住民たちは中国語の名前と各民族語の名前(正名)を持っています。
ちなみに台湾の大統領である蔡英文さんの祖母は排灣族(パイワン)出身だそうです。彼女自身も正名も持っています。

長い年月をかけ、彼らが勝ち取った呼称と誇りを尊重し、本メディアでは「原住民」という表記で統一しています。

祖先は約5,000年前にやってきた

https://en.wikipedia.org/wiki/Austronesian_languages

オーストロネシア語の種類は約700~800種類ともいわれていてます。以下は一例です。

  • 原住民諸語(台湾)
  • マレー語(マレーシア)
  • タガログ語(フィリピン)
  • ハワイ語(ハワイ)
  • マオリ語(ニュージーランド) など

実は同じルーツだったんですね!確かに聞き比べてみると似ているような!

台湾には16の原住民族がいる

Twitter @SumiKeiKiさんより:https://twitter.com/SumiKeiKi/status/5430580027

現在、台湾には政府から公式に認定された16の原住民族がいます。
台湾総人口の約2.4%(約58万人)が台湾に暮らしています。※2021年時点

  • 阿美族(アミ)-21万6,614人
  • 泰雅族(タイヤル)-9万3,345人
  • 排灣族(パイワン)-10万4,428人
  • 布農族(ブヌン)-6万516人
  • 卑南族(プユマ)-1万4,880人
  • 魯凱族(ルカイ)-1万3,546人
  • 鄒族(サウ)-6,690人
  • 賽夏族(サイシャット)-6,824人
  • 雅美族(タオまたはヤミ)-4,781人
  • 邵族(ツォウ)-828人
  • 噶瑪蘭族(クバラン)-1,547人
  • 太魯閣族(タロコ)-3万3,173人
  • 撒奇萊雅族(サキザヤ)-1,037人
  • 賽德克族(セデック)-1万774人
  • 拉阿魯哇族(サアロラ)-439人
  • 卡那卡那富族(カナカナブ)-388人

台湾行政院 公式サイトより

平地に住んでいる人口と山奥に住んでいる人口割合は約5:5で、阿美族の人口が最多で、次いで排灣族、泰雅族となっています。
今では異なる民族間での結婚などにより民族間で徐々にボータレス化していき、ダイバーシティが進んでいます。

原住民族の登録には政府の認定が必要

昔は一つの部族として大きく括られていたのですが、調査や研究を重ねていくうちに同じ部族でも文化、言語、風習が異なっていることがわかり、細かく分類されるようになりました。政府の認定基準があり、直近だと2014年に拉阿魯哇族(サアロラ)、卡那卡那富族(カナカナブ)が新たに原住民族として認定されました。

どこに住んでいる?

さて、どこに行けば原住民たちに会えるのでしょうか。多くは東側(花蓮県、台東県)や、南側(屏東県)に住んでいます。

台湾における先住民族の分布図。(行政院原住民族委員会サイトより)

どんな言葉を話すの?

母語は中国語ですが、民族特有の言語も話します。高齢の方だと流暢な日本語も話せます。
おもしろいことに、同じ民族でも言葉やニュアンスが違ってくるんですよね。例えば、本メディア名にもなっている「ngiha’(声)」は阿美族の言葉ですが、北部と中部だとこうなります。

「声」

・北部

 soni(ソニ)

・中部 

 ngiha’(ニハ)

原住民族の特徴

彼らの特徴といえば、なんといっても華やかな衣装と盛大なお祭りです!
民族ないしは部落(≒村)ごとに執り行い方や雰囲気は異なってくるのですが、その様はまさに見ものです。
このメディアでも各民族のお祭りも取り上げる予定なので、ぜひ合わせて読んでみてください!

まとめ

 遠い祖先は海を渡り台湾島に上陸し、独自の文化を発展させ太平洋に拡散していきました。歴史上、苦汁と辛酸を舐めた原住民たちはその呼称をたゆまぬ努力で獲得しました。今となっては台湾文化を形成する重要な一要素となっています。

少しアカデミックな内容となりましたが、台湾原住民族についてザックリとわかっていただけたでもとても嬉しいです。

これからも歴史に関わらず様々なジャンルを情報発信していきます。
台湾原住民族の魅力をどんどん伝えていきますので、よろしくお願いします!